
知的障害のあるお子さまが20代になると、「この先どんな生活を送っていくのだろう」「親が支えられなくなったらどうなるのか」と、不安を感じるご家族は少なくありません。子どもの頃は学校や家庭を中心に生活が成り立っていても、卒業後は働き方や住まい、人との関わり方など、現実的な課題に直面しやすくなります。
特に、身体的には元気で日常会話もできる場合、「一人で生活できそう」と周囲から見られやすく、必要な支援が伝わりにくいケースもあります。本人なりに困りごとを抱えていても、外からは見えにくいため、家族だけが悩みを抱え込んでしまうこともあるでしょう。
この記事では、知的障害のある20代の子どもを持つ親が抱えやすい悩みや、不安が強くなる理由について詳しく解説します。将来への備えを考え始めるきっかけとして、ぜひ参考にしてください。
知的障害のある20代の子を持つ親が抱えやすい悩み

20代は、子どもから大人へと生活環境が大きく変化する時期です。
学校生活が終わり、「これから先をどう生きていくか」を現実的に考えなければならなくなります。
親としては、本人が安心して暮らせる未来を願う一方で、支援の必要性や将来設計に悩みを抱えることも少なくありません。
親亡き後の生活が想像できない
多くの保護者が強く不安を感じるのが、「自分がいなくなった後、この子は生活していけるのだろうか」という問題です。
今は親がサポートしている家庭でも、年齢を重ねるにつれて体力的な負担は大きくなります。病院への付き添い、金銭管理、食事の準備、対人トラブルへの対応など、日常生活の中には家族の支えが必要な場面が数多くあります。
知的障害のある方の中には、ルーティン化された行動は問題なく行えても、急な予定変更や予想外の出来事に対応することが苦手なケースがあります。困ったときに誰へ相談すればいいのか判断できず、不安や混乱につながる場合もあります。
そのため、親は「自分が元気なうちは何とかできる」という思いと同時に、「将来的に支える人がいなくなったらどうなるのか」という現実的な悩みを抱えやすくなるのです。
住まいの問題も大きなテーマのひとつです。実家で暮らし続けるのか、グループホームなどを利用するのか、将来の選択肢を考え始めても、「本人に合う場所が見つかるだろうか」と不安を感じるご家族は多くいます。
足腰がしっかりしているため支援の必要性が伝わりにくい
身体的に健康で、一見すると日常生活に問題がないように見える方ほど、周囲から支援の必要性を理解されにくい傾向があります。
たとえば、一人で歩ける、会話ができる、買い物に行けるという姿だけを見ると、「ある程度自立している」と判断されることがあります。しかし実際には、金銭感覚が未熟だったり、相手の言葉をそのまま信じてしまったり、トラブルへの対処が難しかったりするケースも少なくありません。
本人が困っていても、それをうまく言葉で説明できないこともあります。周囲に「できるはず」と思われることで、必要な配慮や支援につながりにくくなってしまうのです。
家族としては、「見た目ではわからない困りごと」を理解してもらえないつらさを感じる場面もあるでしょう。
特に20代になると、“大人として扱われる場面”が増えていきます。勤務先や地域生活の中で、本人の特性が十分に理解されないまま負担を抱えてしまうこともあります。
その結果、本人が失敗体験を重ね、自信を失ってしまうケースも少なくありません。親は「もっと周囲に理解してほしい」と感じながらも、どこまで説明すべきか悩むことがあります。
将来の働き方に悩む
知的障害のある20代の子どもを持つ親にとって、「どんな働き方が本人に合っているのか」は大きな悩みのひとつです。一般就労を目指すべきなのか、福祉的就労が合っているのか、あるいは日中活動中心の生活が安心なのか。選択肢が多いからこそ、迷いが生まれます。
本人に働く意欲があっても、環境によってはストレスを強く感じることがあります。仕事内容だけでなく、人間関係や通勤、生活リズムとの相性も大きく影響します。
実際には、「働けるかどうか」だけではなく、「無理なく続けられるか」が重要です。周囲と比較して焦りを感じる保護者も少なくありません。同年代が就職や結婚をしていく姿を見る中で、「この子の将来は大丈夫だろうか」と不安になることがあります。
一方で、本人に合わない環境を無理に選ぶことで、心身の負担が大きくなる場合もあります。そのため、“社会参加”と“安心して生活できる環境”のバランスを考えることが大切です。
兄弟姉妹への負担を心配している
将来について考えたとき、兄弟姉妹への負担を心配する保護者も多くいます。「自分たちがいなくなった後、きょうだいが面倒を見ることになるのではないか」「負担を背負わせてしまうのではないか」と悩むケースは多いです。
兄弟姉妹は幼い頃から自然に支える立場になることも多く、親としては複雑な気持ちを抱えやすいものです。もちろん、家族同士の支え合いは大切です。しかし、特定の家族だけに負担が集中すると、将来的に精神的・経済的な負担につながる可能性があります。
そのため、家族だけで支える前提ではなく、福祉サービスや地域支援を含めた体制づくりを考えていくことが重要です。
20代だからこそ将来への不安が強くなる理由

子どもの頃は学校という支援環境があり、生活の流れもある程度決まっていました。
しかし20代になると、卒業後の進路や生活のあり方を具体的に考える必要が出てきます。
親自身の年齢も重なり、「今後をどう準備していくべきか」を現実的に考え始める時期でもあります。
学校卒業後に環境が大きく変わる
学校に通っていた頃は、先生や支援員との関わりがあり、生活リズムも整いやすい環境がありました。
一方、卒業後は日中活動の場所や人間関係が大きく変化します。環境の変化に強いストレスを感じる方も多く、生活リズムが乱れたり、不安定になったりするケースがあります。
特に、毎日通う場所が合っていない場合は、本人の負担が大きくなりやすくなります。親としては、「この環境で本当に大丈夫なのだろうか」と悩みながら試行錯誤を続けることがあります。
親自身の年齢や体力を意識し始める
20代の子どもを支える保護者は、40代〜60代に差しかかっていることも多く、「あと何年今のように支えられるだろう」と考え始めます。
若い頃は問題なくできていた送迎や付き添いも、年齢とともに負担を感じやすくなります。体力面だけではなく、自分自身の病気や介護、仕事との両立など、新たな課題が出てくる家庭もあります。
そのため、「今は何とかできている」という状況でも、将来を見据えた準備の必要性を感じやすくなるのです。
特に、知的障害のある方の支援は“長期的な関わり”になるケースが少なくありません。親子の距離が近いからこそ、保護者が一人で責任を抱え込み、精神的に疲弊してしまうこともあります。
「親が頑張れば何とかなる」と無理を続けると、いざという時に支援体制が整っていない状況になる可能性もあります。だからこそ、元気なうちから少しずつ外部の支援につながっておくことが大切です。
本人の“できること”と“難しいこと”の差が見えてくる
20代になると、本人の得意なことと苦手なことが、よりはっきり見えてきます。
たとえば、電車移動や簡単な会話は問題なくできる一方で、金銭管理や契約、複雑な判断になると難しさが出るケースがあります。
見た目には“普通にできているように見える”ため、周囲からは支援の必要性が理解されにくいこともあります。しかし実際には、生活のさまざまな場面で見守りやサポートが必要な場合があります。
特に社会に出ると、自己判断を求められる場面が増えていきます。相手の言葉を断れない、トラブルに巻き込まれやすい、焦るとパニックになってしまうなど、日常生活の中で困難が生じるケースも少なくありません。
親としては、「どこまで本人に任せるべきか」「どの部分を支援するべきか」のバランスに悩みやすくなります。本人の力を信じながらも、必要な場面では支援を受けられる環境を整えることが、安心した生活につながります。
知的障害のある20代に必要な“自立支援”とは

“自立”という言葉に対して、「一人で何でもできる状態」をイメージする方もいます。
しかし、知的障害のある方にとっての自立とは、必要な支援を受けながら、その人らしく生活できることを指します。
苦手な部分を無理に克服させるのではなく、本人が安心して暮らせる環境を整えることが重要です。
生活リズムを整える支援
安定した生活を送るためには、毎日の生活リズムを整えることが欠かせません。起床時間、食事、通所、入浴、服薬など、日常生活の流れが安定することで、本人の精神面も落ち着きやすくなります。
一方で、予定変更が続いたり、生活が不規則になったりすると、不安定になるケースもあります。
そのため、本人に合ったペースで生活を整えられる支援が重要です。声かけや見守り、スケジュール管理など、小さな支援の積み重ねが安心感につながります。
生活リズムが安定すると、日中活動への参加や対人関係にも良い影響が出やすくなります。
コミュニケーション面のサポート
知的障害のある方の中には、自分の気持ちをうまく伝えることが苦手な方もいます。相手の言葉をそのまま受け取ってしまったり、場の空気を読むことが難しかったりすることで、人間関係のトラブルにつながるケースもあります。
特に20代になると、学校以外の人との関わりが増えていきます。職場や地域生活の中では、社会的なルールやコミュニケーション能力が求められる場面も多くなります。
そのため、対人関係をサポートする支援はとても重要です。
たとえば、「困ったときは誰に相談するか」「断ってもいい場面があること」「相手との距離感」などを、日常の中で少しずつ学んでいくことが大切です。
本人が安心して人と関われる経験を積むことで、社会参加への不安も軽減しやすくなります。
金銭管理や買い物支援
金銭管理は、知的障害のある方が生活する上で大きな課題になりやすい部分です。お金の価値や計画的な使い方が難しい場合、浪費やトラブルにつながる可能性があります。
特にスマートフォン決済やネット通販が身近になった現在は、気づかないうちに高額な買い物をしてしまうケースもあります。
また、人に頼まれると断れず、お金を貸してしまうなど、対人トラブルに発展することもあります。完全に本人任せにするのではなく、状況に応じた見守りやサポートが必要です。
家計簿を一緒につける、使う金額を事前に決める、買い物の練習をするなど、段階的に経験を積み重ねることが大切です。
成功体験を積み重ねる環境づくり
本人の自信や意欲を育てるためには、「できた」という経験を積み重ねることが重要です。失敗ばかりが続くと、自信を失い、新しいことへ挑戦する意欲が低下してしまいます。
一方で、小さな成功体験が増えると、「自分にもできる」という感覚につながります。「一人で買い物に行けた」「時間通りに通所できた」「自分から挨拶できた」といった日常の小さな経験も、大切な成長の一歩です。
周囲ができない部分ばかりを見るのではなく、本人の得意なことや成長を認める視点が重要になります。
小さな「できた」を増やすことが将来につながる
将来への不安が大きいと、「もっと自立させなければ」と焦ってしまう保護者も少なくありませんが、一度に多くを求めると、本人にとって大きな負担になる場合があります。
大切なのは、本人のペースに合わせて経験を積み重ねることです。洗濯物をたたむ、簡単な料理をする、近所へ買い物に行くなど、生活の中で少しずつ“できること”を増やしていくことで、自信や生活力につながります。
成功体験を積み重ねた経験は、将来的に新しい環境へ挑戦する際の安心感にもなります。「今すぐ完璧にできるようになること」ではなく、「少しずつ経験を重ねていくこと」が、長い目で見た自立支援につながっていくのです。
親だけで抱え込まないために知っておきたい支援先

知的障害のある20代の子どもの将来を考えると、不安を感じるのは自然なことです。
しかし、家族だけで支え続けようとすると、精神的にも体力的にも負担が大きくなりやすくなります。
将来への不安を軽減するためには、早い段階から家族以外の支援とつながっておくことが大切です。
相談先や支援制度を知っておくことで、「困った時に頼れる場所がある」という安心感につながります。
相談支援専門員に相談する
将来の生活や福祉サービスについて悩んだ時は、相談支援専門員へ相談する方法があります。相談支援専門員は、本人や家族の状況を整理しながら、必要な福祉サービスや支援先を一緒に考えてくれる専門職です。
「どんなサービスが利用できるかわからない」「将来的にグループホームを考えたい」「本人に合う通所先を探したい」など、幅広い相談ができます。
家族だけで情報を集めようとすると、不安が大きくなってしまうこともあります。専門職とつながることで、地域の支援情報を知るきっかけにもなります。
グループホームという選択肢
将来の住まいとして、グループホームを検討する家庭も増えています。グループホームは、知的障害のある方が支援を受けながら共同生活を送る住まいです。食事や金銭管理、生活面のサポートを受けながら、自分らしい生活を目指していきます。
「親元を離れて生活できるだろうか」と不安を感じる家族も少なくありません。しかし、少人数で落ち着いて生活できる環境や、スタッフへ相談できる安心感から、本人が前向きに過ごせるケースもあります。
住まいは将来に大きく関わる部分だからこそ、早めに情報収集を始めておくことが大切です。
就労支援や日中活動を活用する
社会との関わりを維持するためには、本人に合った日中活動の場を見つけることも重要です。就労継続支援や生活介護など、障害特性に合わせた支援サービスがあります。働くことだけを目的にするのではなく、「安心して通えるか」「本人が落ち着いて過ごせるか」という視点も大切です。
人との関わりや生活リズムを保つことは、心の安定にもつながります。
見学や体験利用で本人との相性を確認する
支援先を選ぶ際は、見学や体験利用を通して、本人との相性を確認することが重要です。同じグループホームや事業所でも、雰囲気や支援方法は大きく異なります。実際に見てみることで、本人が安心して過ごせそうかを具体的にイメージしやすくなります。
家族だけで決めるのではなく、本人の気持ちも大切にしながら、無理のない形で選択肢を広げていくことが大切です。
知的障害のある20代の将来に向けて家族ができる準備

将来への不安を完全になくすことは難しくても、今から少しずつ準備を進めることで、本人にも家族にも安心感が生まれます。
大切なのは、「親だけで支え続ける形」ではなく、地域や支援者とのつながりを広げていくことです。
本人が安心して暮らしていくためには、早い段階から「相談できる場所」や「頼れる人」を増やしておくことも大切です。
家族以外との関係を増やしていく
将来的な安心につなげるためには、家族以外にも本人を理解してくれる存在を増やしていくことが大切です。相談支援専門員や通所先のスタッフ、地域との関わりを持つことで、困った時に相談できる環境が整いやすくなります。
生活経験を少しずつ積み重ねる
家事や買い物、公共交通機関の利用など、日常生活の経験を少しずつ増やしていくことも重要です。小さな経験の積み重ねが、自信や生活力につながります。
早めに住まいの選択肢を知っておく
グループホームなどの住まいについて早めに情報収集しておくことで、将来的に慌てず選択しやすくなります。見学や体験利用を通して、本人に合う環境を知ることが大切です。
まとめ
知的障害のある20代の子どもを持つ親にとって、将来への不安はとても現実的な問題です。特に、身体的には元気に見える場合、「支援が不要」と思われやすく、悩みを周囲に理解してもらえないこともあります。
しかし、自立とは“すべてを一人で行うこと”ではありません。本人に合った支援を受けながら、安心して生活できる環境を整えていくことも大切な自立の形です。
将来への備えは、今すぐ完璧に進める必要はありません。相談先を増やしたり、生活経験を積み重ねたり、住まいの選択肢を知っておくことで、少しずつ安心につながっていきます。
家族だけで抱え込まず、支援機関や地域とつながりながら、本人に合った将来の形を考えていくことが大切です。
こざくら学園の運営内容は、生活介護(日中)、施設入所支援(夜間)を通じて24時間(入所施設)体制で、サービスを提供しています。
また、共同生活援助(グループホーム)の運営をしています。障害者支援施設をご検討の方は、こざくら学園までお気軽にお問い合わせください。
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